かみなり、
雨降りの空に鳴り響く醜い音を聞いて少年は呟いた。
窓の向こうには土砂降りの雨と真っ黒い雲が空を覆って隠している。
ぴかりと光って、瞬間消える。そんな光の名前を彼はもう一度呟いた。
光が瞬くたびにその頬が照らされて青白く映る。
かみなり
妹はかつて其れを綺麗だと言った。
金色、銀色、紫色、雲を千切って降ってくるその光を。
怖くないのかとからかって、馬鹿にしすぎだと拗ねられた。
そんな思い出が愛しくて、その名を自らに課したのかもしれない。
でも今はわかる。
其れは瞬いて終わる短い命の名前。
後に醜い音を残して潰える幻の名前。
そして、その名はやはり自分にぴったりだ。
独りで勝手にやってきて、独りで勝手に去っていく。
綺麗だと笑っていた妹さえも救えなかった自分と其れは瓜二つのようで。
気付かれないように自嘲した。
「きれいですね、かみなり」
醜い音だけが響いていた部屋に突然声が響く。
振り返ったその空色の瞳には明らかな自分への好意が見えていて、
その台詞が妹の思い出を引き起こし蘇えらせるようで、
胸が、詰まった。
「―怖くないのか、」
「さすがに、怖くないですよ」
ライトさんは僕を馬鹿にしすぎです、
拗ねたように呟く声が、顔が
あの日のものと重なった。
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