ライトさんて、僕のことどう思ってるんですか・・・?

妙に悲しげというか寂しげというか、濡れた子犬のような目でそう尋ねられた。
いつもどおりに接していたつもりだったが、ライトニングの何らかの動作が彼にそう言わせるまでに至ったらしい。全くもって検討もつかなかったがそう迫られて困ったのは事実だった。

「どう、と言われても・・・」
「いっつもライトさんはハッキリ言うじゃないですか、僕のことをどう思ってるかぐらいハッキリ言ってくださいよ!」

こちらは何がなんだかわかっていないのにホープはと言えばぎゅっと拳を握って声まで荒げている。ここのところ落ち着いてきて、声を荒げることなどめったになかった上に、その突然の変異の理由がわからず彼女は戸惑うばかりであった。
実際はライトニングがあまりにもホープを弟のように扱っていたことが、ライトニングに恋心を募らせるホープを焦らせただけのことであったのだが、ライトニングには自身の行動の何かがホープの逆鱗に触れてしまったようにしか見えなかった。

「大切に、思っている・・・」
「大切にって、どういう風に大切に、ですか?ライトさんは皆のことも大切に思ってるでしょう?それと同じ大切ですか?」

半ば睨むように細い眉を顰めているホープの顔がまっすぐ見られず、ライトニングは軽く俯いた。確かに旅を始めて大切なものは増えていた。妹だけ守れればいいと思っていたはずの手には今や守りたいものが沢山握られ、こぼさないよう歩くのが精一杯で、その大切の意味について考える余裕などなかったのだ。

「・・それは・・・、わからない。」
「・・・・じゃあ、スノウと僕は同じ大切ですか?」

そう問われて、初めて大切の意味に思いを馳せる。確かに、スノウへの印象もかつてとは変わり、大切な仲間だと思っていた。自分に生きていく希望を見せたのは彼だし、妹を任せられるほどに心優しく大きな存在だとわかっていた。けれど、その思いをホープに重ねられるか、と尋ねられれば、それは違う気がした。

「それは、違う・・・と、思う。」
「じゃあ僕とサッズさんは?僕とヴァニラさんだとどうですか?ファングさんでは?」

続けてそう問い詰められライトニングは慌しく頭を回転させる。頭を使うことは嫌いではないが、自分の感情について深く考えることは昔から苦手で、セラにいつも呆れられていたことを思い出した。ホープが自分を見つめたまま忍耐強く答えを待っているのをいいことにライトニングはゆっくり時間をかけて自分の感情を整理していく。
サッズも、ヴァニラも、ファングも、苦難を共にしてきた仲間で、彼らとの絆は絶対に断ちたくないと思っていた。けれど、ホープの場合、それだけか、と言われて頷くことはライトニングにはできなかった。

「それも、きっと、違う・・・」
「それなら・・・、セラさんと僕はどうですか?」

ホープは今までの質問の中で一番時間をかけてその言葉を口にした。まるで言いたくなかったことかのように苦悩していたのがライトニングにもわかるほどであった。
セラ、ライトニングは柔らかく笑っていた妹の顔を思い出す。今はどこにいるかもわからない。けれど、会えると信じてここまでやってきた。いわば今の彼女の支えとなっているのはその存在であった。優しくて、おおらかで、強くて、でもどこか抜けていて、守ってやらなければならないと、それこそ自分の名を捨てるほどに、強く心に誓っていた。確かに、その感情はホープに対するものと一番近いかもしれない。大切で、守りたい。

そこまで考えて、はた、とライトニングは思考を止めた。

では、ホープは弟なのか。

彼女はゆっくりと、唇をかんで目をそらし自分の答えをじっと待っているホープの顔を見下ろす。
大切で、守りたいのは一緒だ。けれど、どうにもその考えはぴんと来なかった。旅を通して、彼女は沢山のものをホープに与えてきたつもりだった、が、実は与えられていたのは彼だけではなく、自分も彼から多くのものもらっていたのだとライトニングは最近気付いたのだった。
そうだ、一方的に守りたいのではない、自分、は・・・、


「それも、違う。」
「それはセラさんのほうが、大切って意味ですか?」
「・・・いいや、どちらが大切だとか、そんなのじゃない。お前がいなければ、私はきっと、困る。」
「ライトさんが・・・?」
「ああ。お前に傍に居て欲しいと、思ってる。」

戸惑いながらそう口にすると、曇って今にも雨を降らしそうだったホープの顔がぱぁ、と晴れた。本当ですか?嘘なんか嫌ですよ?と念を押すように自分の手を取ってそう口早に告げてくるホープは、今まで見てきたその姿と少し違うように見えて、ライトニングは小さな違和感を覚える。

何かが始まるような、そんな気がした。







「それでお前、怒ってたんじゃないのか?」
「え?僕ですか?怒ってませんよ?」