全てが終わってから五年。
眠りについていたはずの、懐かしい、愛しい仲間からの連絡が、スノウの元へ入った。


『ファングさんとヴァニラさんの目が覚めたって、え・・!?本当に!?』

スノウは予想していた通りの反応に思わず電話の受話器を耳から離した。
そう、それは昨日のことだった。今はもうほとんど使うことなどなかった携帯電話にファングからの連絡が入ったのだ。かつてと何も変わらない声色で、目が覚めた、どうせお前暇なんだから迎えに来い、と。
今ファングとヴァニラといえばスノウ達の家で、グラン=パルスに再建された文明を堪能していた。

「ああ、だから、お前にも知らせておこうと思って。」
『当たり前だよ!え、会いに行っても大丈夫なの?元気なの?』
「落ち着けってホープ。こっちの心配なんか関係なしに元気だよ、あいつらは。それにこれから来るのだってお前は大変だろ?どうせすぐ集まることになるんだから、それまで待てよ。」
『すぐに集まるって・・・、あ・・・、結婚式?』
「当たり前だろ?」

スノウはソファに座ってきゃいきゃいと騒いでいる女四人を軽く眺める。五年前に決めたことだった。ライトニングはセラとの結婚を許したが、大切な仲間が目覚めるまで結婚はしない。そう話すとセラもライトニングも柔らかく笑って頷いてくれた。もっと長く待つことになるかと思っていたが、予想よりも早く彼女たちは目覚め、五年以上もの月日を経て、やっと自分たちは結婚する。

『そっか、いつ?』
「まあ準備もあるし、二週間後くらいには。親父さんに来てくれないかって伝えてくれ。」
『それでも早いよ。わかった。また連絡してよ。』
「おう。んじゃあな。」

電話口で笑っていたホープの声はかつてよりも低く、実際会ったわけではないが彼曰く背も伸びたらしい。スノウ自身はあまり気付いていなかったが、サッズやファング、ヴァニラ、そしてセラまでもホープとライトニングの仲についてはなんとなく察しているようで、スノウも次第にホープを弟分として心配するような気持ちが生まれていた。受話器を置いて、ソファのところまで戻るとせっかく代表して連絡したにも関わらず、随分と手荒く迎えられた。

「やっと連絡終わったのかよ。」
「馬鹿だから仕方がない。」
「五年たっても馬鹿なんだー?」

お前等なぁ・・・と思いはするが口にはしなかった。今はただ仲間の帰還と愛する人と結婚できるということを喜んでいたかった。

「それで?みんな何て言ってた?」

その場を取り持つかのように微笑んでそう訪ねてきた愛しい人を抱きしめてスノウは笑う。

「すぐにでも会いに来たいけど結婚式まで待ってくれるってさ。」
「そっか、よかった。」

酷く長い間戦っていた、戦って苦しんで、諦めそうになったこともあった。それでもここまでこれた。

「本当によかった。」

もうすぐ念願の夢が叶う。



「すぐにでも会いに来たいけど結婚式まで待ってくれるってさ。」

ライトニングはソファに身を埋め、テレビの画面を見つめたままその言葉を聞いた。テレビにはもはやかつての混乱の色すらなく、平穏なニュースばかりを流している。しかし、ライトニングの耳にはそれらの情報は全く入っていっていなかった。五年、二人の仲間の目覚めを待ち続けた。そして、その約五年、連絡はとってもホープとはほとんど会っていなかった。彼は今は父と二人で暮らし、学校にも通い、今は更にその進学先の学校に通っているらしい。
会わなければ会わないほど、どうしてか、会いたいという思いは増していった。それなら会いたいって言えばいいじゃない、とセラは簡単に言ったがどうしてもそれは出来なかった。意地と言うかプライドと言うか、とにかくそんなことは出来なかったのだ。
そう言い張ると案の定、意地っ張り、と馬鹿にされたが。

「それで、いつにすんだ?」
「二週間後くらいかな、って思ってる。」
「いいんじゃない?」

会話が勝手に進んでいくのをいいことにライトニングは完全に一人の世界に入っていた。二週間後に結婚式を開くことになればホープもここまで来るだろう。自分から言い出さずとも会える貴重な機会だ。特になにか話すことがあるわけでもないがそう考えると表情が緩んだ。

「飲み物でも持ってくる。」

そう言って立ち上がり、緩んだ顔を隠すため台所へ向かう。口元を軽く押さえながらグラスを出して飲み物を注いでいると背後から肩を叩かれた。

「姉さん、よかったね。」

妹はそう笑ってライトニングの手元のグラスを持ち上げる。一人じゃ持てないでしょ、と手伝いに駆けつけたと言うことを装っているが実際は姉をからかいにやってきたのだろう。

「よかったのはお前だろう。」
「もちろん、私たちだって嬉しいけど、私たちの結婚より嬉しいことが姉さんにはあるんじゃないの?」
「何を言ってる・・・」

大げさに呆れて見せるとくすくす笑いながらセラがライトニングの脇腹をちょいちょいと突っついた。

「嬉しいくせに、ホープ君と会えるの。」
「・・・・・。」
「ほら、だんまり。嬉しいことは嬉しいって言わないと。」
「セラ、はたかれたいか・・・?」
「きゃースノウーたすけてー!」

きゃっきゃと笑ってリビングに駆け込んでいく妹をライトニングは苦笑しながら見送る。全ての終焉から五年。待ちわびた何のわだかまりもない平和が、ここにあった。
そしてやっと、誰よりも大切で心配だった妹は自分の手元からいなくなる。その先の未来など全く見えなかったけれど、何故だが不安はなかった。

自分の気持ちだけに正直になれる時が近づいているのかもしれない。

ライトニングもまた、飲みものに満たされたグラスを手にリビングへ向かった。


ホープは友人からの誘いも全て断り、先ほど切った携帯をしまう暇さえ惜しみ、帰路を急いでいた。すみません、と謝りつつ人ごみを掻き分ける。
今日は父が在宅している日だった。素晴らしい報告が出来る。ファングとヴァニラが目覚めたという事実は長いこと感じていなかった高揚をホープにもたらした。
幼い頃母の居る家に走って帰ってきたときのように、ドアを勢いよく開き、リビングに駆け込むと父の驚いた顔が妙におかしかった。
興奮が収まらないまま先ほどスノウから受けた連絡を伝えると、父も自分のことのように喜んでくれた。旅に同行していなかったとはいえ、父は真の意味で常に自分たちの見方だったのだ。

「スノウとセラさんの結婚式、父さんも来てくれないかって、スノウが。」

父は自分が行ってもいいのか、などと笑っていたが、その声色には喜びが溢れていた。
大丈夫だよ、それに父さんだって本当は行きたいんだろ?などとひとしきりからかった後、ホープは自分の部屋に戻ってから手持ち無沙汰で雑誌を開いたが全く読む気はなかった。二週間後、仲間に会うこと、スノウとセラの結婚式、全てが楽しみだったが、何よりも彼の胸を躍らせたのはライトニングとの再会だった。最後に会ったのは旅が終わってすぐ後、まだ背もあまり伸びていなかった頃だった。かつての自分の身長を基準にライトニングの背を記憶していたため、その詳細はわからなかったが今はきっと彼女よりも背が高い大人の男になれているはずだ。

このときをずっと待ちわびていた。

伝えたい。

「ライトさん、」

長年の恋心を伝えられる日は、近い。





未だ思いは届かなくても










リクエストが多かったED後のお話第一弾です。
一応リク内容は、「ED後の話」と「ホープが大人になったくらいの話」です。
これからスノウとセラの結婚式とかいろいろ続けたいなぁ、と思ってます。
いずれはホープからライトさんにプロポーズ、結婚、みたいなところまで・・・
できたら・・・(こら
ホープが大人になったくらいの話、というのも含めていいのか迷いましたが含めてしまいます。
ホープ君の求婚奮闘物語はまだまだ続く予定ですので、
ホープ君も管理人も見守ってやってください。
ということでリクエストありがとうございました!